烏骨鶏はこんな鶏です | 烏骨鶏の歴史と現代の定義

烏骨鶏とは

西洋では、日本産の烏骨鶏が最もよいと信じられています。その外観は日本鶏という概念から全くかけ離れたものです。烏骨鶏は鶏の祖先と見なされている赤色野鶏の面影などが、きわめて薄いといえます。体型もどちらかというと九斤(くきん)型です。
「烏骨鶏は、舌が黒いと骨肉も黒い。舌の黒くない子同士を交雑させると普通の鶏となる」ということを実証した人がおりました。新井白石(1657~1725)はそれを”おかしい”と感じたそうです。しかし、遺伝学的には何の矛盾も疑問もない当然の現象ですが、当時では全く奇異なことと感じたのでしょう。烏骨鶏は軍鶏(シャモ)や矮鶏(チャボ)と同様に日本画に登場することの多い鶏です。
鶏の後肢体は腸骨、恥骨および坐骨が結合した寛骨からなりたち、複合仙骨とともに強固な腰部骨格を形成し、後肢骨、大腿骨、下腿骨、足根骨、巾足骨および趾骨からなりたっています。下腿骨は頸骨と腓骨とで形成されていますが、腓骨の発達はあまりよくありません。
趾骨は第1~第4趾をそなえており、第1趾は後方に位置し2個の趾骨をもっています。また、第2趾は3個、第3趾は4個、第4趾は5個の趾骨をもち、前方向に放射状に開き、前端の趾骨はすべて鉤爪形を示しています。 烏骨鶏は第5趾異常をそなえた特徴ある鶏種ですが、それらのすべては第1趾の上位に位置します。骨色はメラニン色素の沈着によって紫暗食を示しています。
烏骨鶏という日本名は中国での鶏名そのままです。これは糸毛(絲毛)という特性とともに、もう一つの特性である顔面をはじめ皮膚や筋肉を含む全ての内臓さらに骨までもメラニン色素の沈着が多いことによって、黒に近い暗紫色であることから命名されました。
烏骨鶏は西インドから東は中国まで広範囲に分布し、古くから知られていた鶏種ですが、原産地はどこなのかという疑問は未解決のままです。外国の古い家禽書にはシルキー つまり絹糸というイメージによる連想から日本を原産国とする記述が残っています。日本では渡来地の確定はできていませんが、インドや中国が原産国ではないだろうかと推測され、渡来鶏として扱われております。 中国の文献には古くから登場し、はっきりとした記述では宋代(11世紀)に著された「物類相感志」に記載されており、「烏骨鶏の舌黒き物は骨黒し」というのが最古です。
イタリアのマルコポーロによる「東方見聞録」(1271~1295)には、「行在(現在の杭州)の南、建寧府(現在の福建省建甌)で、全身黒く、猫のような肌をした羽毛のない鶏<別伝本による髪毛の鶏>を見た」と記してあります。これは、たぶん烏骨鶏のことでしょう。
現在でも、烏骨鶏が福建省やそれに隣接している江西省や広東省に多く飼育されており、江西省泰和県に原産したものとして泰和鶏と呼びなわらしているところをみると、この辺こそが原産地なのかもしれません。烏骨鶏の薬効を日本に伝えたのは「本草網目」という中国本草学の書物であり、時あたかも漢方療法盛んな江戸初期でした。「烏骨鶏丸」という名の薬は婦人の諸病に卓効を発揮し、特に、子宝に恵まれるということでした。

烏骨鶏は日本鶏のみならず一般の鶏からも全くかけ離れた特異な鶏種です。体型はコーチン種に似ており、羽毛は全く羽面を形成しない羽で全身が覆われており、中国においては”絲毛鶏”とよばれ、イギリスにおいては“シルキー(絹糸鶏)”と呼ばれております。 烏骨鶏の卵は脳出血に特効があり、鶏肉は呼吸器疾病の特効薬になると思われて古くから珍重されてきましたが、これらの点に関してなんら科学的な裏付けはありません。烏骨鶏はきわめて就巣性が強く、育雛もなかなか巧妙なため、希少鶏の貴重な種卵を孵化させる時の仮の母鶏としてよく用いられております。

頭部:
冠はイチゴ状であり、その後方に毛冠が叢生し、美しく後方になびいています。しかし最近では、冠が著しく大型となって毛冠が生じなかったり、冠色が紫黒色ではなく赤色を帯びたりするような烏骨鶏もめだちますが、これらは系統を維持するための選抜から除外するべきであろうと考えております。耳朶は濃藍色で、肉髯は黒紫色の半円形です。

体部:
絹糸の羽毛を特徴とします。しかし、これも近年においては平羽の混生している個体が多くなっていますが、やはり育種選抜の対象から除外すべきであると考えております。背部は広く短く、翼は短くてやや低い位置にあります。

尾部:
小型で扇状を成しています。他鶏と比べると尾部の発達は悪いようです。

脚部:
腿部は短く、脛の外側には絹糸状の短い羽毛が生えています。脚趾は通常5本以上あります。
※肉髯(にくぜん)種のほかに毛髯種の烏骨鶏がおります。毛髯種は毛髯が小型の肉髯をおおい、これが眼の下にまでおよんでいます。
烏骨鶏の脚羽が絹糸状でなく、羽が面をなし平羽(板羽)を呈しているものを「鷹膝」と称します。烏骨鶏では、この鷹膝を呈している個体は育種選抜の対象から外れる失格条項の一つです。
烏骨鶏の羽毛は軟羽と同じで羽面を全く形成しません。烏骨鶏は絹糸状の羽毛、毛冠、脚羽や紫黒色をした冠、顔および肉髯などの上皮や脚色にくわえて、「第5趾をもつ」という特性があります。この第5趾とはヒトの小指に相当する部位を示し、4趾しかない鳥類につかうのは妥当ではないでしょう。正確に表現するのなら、烏骨鶏においては、「第1趾が数本に分岐した」というべきです。
今回の解剖サンプルにおいてもそれは明確でした。かつては趾数の多い固体が望まれて、8趾を数えるまでになり、そのうえバランスのよいものが最高とされていました。

Copyright (C) 2012 Laboratory for nutrition sciences of silky fowl nourishments . All Rights Reserved.